「宮崎駿/ナウシカ的世界へ」 赤坂憲雄

小学館の『本の窓』2003年1月号から2004年3・4月合併号まで連載された。
全13回。
第1回「ナウシカ体験から」
第2回「はじまりの風景」
第3回「旅立ちのとき」
第4回「風の谷」
第5回「蟲めずる姫」
第6回「母とはだれか」
第7回「境を越える」
第8回「火の発見」
第9回「文字と歴史」
第10回「犠牲と贖罪」
第11回「穢れの民」
第12回「腐海という森」
第13回「千年のユートピア」

この連載の中で赤坂が、広範に宮崎の作品群に当たっている。
例えば『ナウシカ』にいたる経路として『太陽の王子・ホルスの大冒険』『砂漠の民』
『未来少年コナン』『シュナの旅』を上げているのだが、それ以外にも
新聞に掲載された『長靴をはいた猫』や『どうぶつ宝島』などのマンガや
『雑想ノート』についても丁寧に読んでいるのが分かる。
赤坂はそれまで誰も体系的に語ってこなかった『砂漠の民』と『シュナの旅』について
触れているのが印象的である。
その後は、〈風〉〈母〉〈越境〉〈火〉〈文字〉〈犠牲〉〈贖罪〉〈穢れ〉〈森〉〈千年〉
といった言葉を拠り所にマンガ版『ナウシカ』を丁寧に読み解こうとしている。

そこに新たな問題提起や指摘があるわけではないが
既に表されている中に見落としてはいけない重要なキーが
数多くあり、それらを確実に拾って全体を見ることの大切さが
述べられている。

王権の類型が「王と天皇」の時は
「トルメキア王国=ギリシア的・西欧中世的王権
土鬼諸侯国=イラン的王権
風の谷=アルカイックな王」
だったのが
「トルメキア=西欧中世の王権
土鬼諸侯国=近代の天皇
風の谷=アルカイックな王」
と微妙に変化しているのも面白い。

赤坂の論には実に多くの
ヒントがさりげなく散りばめられている。
それはヒントの提示、という以上に踏み込んではいないのだが
得難いものばかりである。
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この記事へのコメント

KK
2012年05月02日 03:47
キーワードをてきとーに並べてもっともらしく論じたナウシカ論が目立ちますね。そのキーワードがどう選ばれているのかというと結局は論者の印象だから、論者にとって論じやすい方向にしか論がいかなくなります。スーザン・ネイピアの日本アニメ論もそうでした。トルメキアのドルク侵攻と日中戦争の類似をなぜ誰も論じないのだろう。映画で司令官どのが「王道楽土」と公言してるのに。

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