風立ちぬ 雑感

初日の初回を見る。
とにかく早く見たかった。

テレビや雑誌・新聞での宣伝や記事、インタビューなどは
取ってはあるが見てない。
なるべく、鈴木Pの策略をはなれ
先入観を持たずに見たかった。そのためには
今日の朝一番がよかろうという、そういう判断だった。

何がしたかったのかが、明確に伝わる作品だと思う。
ストーリー上の破綻などもなく
淡々と(しかし味わい深い)2時間が過ぎていく。
「紅の豚」がしたいことをした映画だったとすれば
今回の作品は、もっと自覚的に、もっとある意味開き直って
やりたいこと、そしてたぶんやらねばならないと思っていることを
やった映画ではないかと思う。

どのシーンをとっても
きれいで、丁寧で、美しく
それだけで正直言って泣ける気がする。

大人に向けて作ったものだ。だから本当に小さな子には難しいかもしれない。
冒険活劇ではないし、笑いがあるわけでもない。
あるのは宮崎駿という人間が描きたい世界である。

人により評価が違うのはどんなものにでも言えることだし
特に宮崎駿の作品には常に賛否が分かれるという宿命もある。

しかし、私はいいと思う。そして、これで宮崎駿は終わってほしいと思う。

反戦でもなく、もちろんその反対でもない。この作品のどこにも具体的な
戦争は出てこない。あるのは美しい飛行機をつくろうとする男の話だ。
海軍も陸軍もちらっとしか出てこない。モデルグラフィックスの原作のように
戯画化されてさえいない〈若干はあったが〉。

美しい飛行機をつくりたいと願う男がいるだけだ。その結果、日本がどうなったか
世界がどうなったか、ということは確かに現実にはある。重くある。しかし、この作品では
象徴化されるているだけで具体化されない。
だからダメだという意見もあると思う。あるいは逆に、こんな風に堀越二郎を描いてもらっては
困るという立場の人もいるはずだ。

しかし、それでもこういう風に描きたかったんだと思う。
飛行機の飛ぶ姿を。美しいフォルムを。滑らかな飛行曲線を。
技師達の真摯な姿を。

女性は相変わらず、こうあってほしいという女性像である。
でも、こうあってほしいというものを描きたいから描く。そんな感じ。
今はもう見られないような生き様である。

コクリコ坂の時代は昭和38年、この世界も美しかったが、
今回はもっともっと人々の生きる姿が健気で真剣で愛おしいほど美しい。
それを懐古主義的だということもできる。人間は時代でそんなに変わらないという意見もあるだろう。
それでもそういうふうに描きたかったのだという、そんな宮崎駿がいるのだと思う。

絵は抜群だと思う。「ん?」と思うカットはあまりない。
見せ方は、あるラインを遙かに超えてしまっている。
アニメでしかできないのだが、ある意味では「実写」と同じである。
〈「実写」を「アニメ」の上位に置いているわけではないが〉

色彩設定 保田道世 クレジット見ていて「なるほど」と頷く

ユーミンの「ひこうき雲」、もう40年も前の歌である。でもなるほどと思う。
今聞いてもやはり名曲だ。

声も、野村萬斎、西島秀俊、風間杜夫、國村隼、竹下景子、西村雅彦
大竹しのぶ、瀧本美織、堀越加代、良かったと思う。
庵野氏も庵野氏だと知らずに見られれば、もっと良く感じたかもしれない。

美しさ、潔さ…とはこういうものだと私は思う、と宮崎駿が言っている。
皆が与えられた分の中で、精一杯まじめに懸命に生きる。その生き様が美しい。
右でも左でもない。ただ、単にそう言う姿が美しいと言っている。
そういう映画なんだと思う。
画像

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