ビッグバン宇宙論 下/サイモン・シン

新潮社 2006.6.25

上巻に続き読了。1日かからなかった。

下巻はいよいよ「ビッグバン宇宙論」である。
というか「ビッグバン宇宙論」と「定常宇宙論」の長き戦いの記録。
そして、そこには個性豊かな登場人物が沢山出てくる。
まるでフィクションなのではと思うくらいである。いやむしろ
だからこそノンフィクションなのだとも言える。

ビッグバン宇宙論のガモフ、アルフォー、ハーマン
この3人の中にも微妙な確執がある。面白いのはガモフで
この人は本当にフィクションの中の人のようだ。何かある度に
戯れ言をいい狂歌を作る。
一方の定常宇宙論はホイル、ゴールド、ボンディ。
特にホイルという人。本当に魅力的。相手側を揶揄するつもりで
いった「ビックバン」はその後、名称として定着してしまう。
またビッグバンの弱点だった、水素・ヘリウム以外の重い元素はどうやってできたか
について解き明かしてしまい、結果的に塩を送った形になったこと…など。

そして様々なセレンディピティがビックバン宇宙論側に幸いする。
その中でも最大は、ベンジアスとウィルソンの二人がCMB放射を図らずも
発見してしまったことだった。
このCMB放射は1948年にアルファー、ガモフ、ハーマンによって予言されていたが
全ての人に忘れさられ、1964年にディッケとピーブルズが三人の予言を知らずに再び予言した。
そのため先の3人は名誉に預かることができなかった…など。そこにも人間ドラマがある。

ビッグバンについての書物は、現在かなりの数が出版されている。そのため
このシンの「ビッグバン宇宙論」は新味がなく陳腐なものになるのでは、と思った人も
いたかもしれない。しかし、その予想は全く外れる。
周知のことについて、ここまでドラマティックで感動的に
書き上げることのできる構成力と筆致は見事としか言いようがない。
また翻訳した青木薫も素晴らしい。

サイモン・シンの他の著作も読んでみようと思う。
画像

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック