「王と天皇」 赤坂憲雄

『ナウシカ』を考える上で
重要な評論が何本かある。
赤坂憲雄が30代半ばでモノした
この「王と天皇」は、
まるで取り憑かれたかのような
前のめりの勢いと
才走った切れ味のようなものが
渾然一体となった名著である。
読んでいるとワクワクというか
ヒヤヒヤするような冴えがある。

この本の最終章の最後の4頁は
『風の谷のナウシカ』についての記述で
終わっている。
アニメは既に封切りされた後であるが、
マンガ版の方は連載されて6年目
ちょうど3回目の長期休載に入っている時期で
コミックスの4巻が発刊された後あたりが
「王と天皇」の執筆時期であろう。

赤坂はトルメキア王国を〈ギリシア的王権ないし西欧中世の王権〉に近いとし
土鬼思考国は〈バンヴェニストのいうイラン的王権〉と見る。
そして辺境自治国・風の谷を〈もっともアルカイックな《王》〉として捉える。

アニメ版『ナウシカ』のラストはまさに〈初源の《王》の誕生〉であるとし、
そこに〈あえかなる美しき小さなハタモトの系譜を継ぐ者〉=ナウシカに
中世の幼童天皇の姿を重ね合わせる。私達は気付かぬうちに
〈秘めやかに、あたかも集合的な無意識として紡がれてきた幼童天皇のいる風景を
愛でている〉のかもしれないと、論を閉じている。

このある意味で危ういとさえ言えるナウシカへの言及は
この時のこの著の結論の近いところにナウシカがたっていると
赤坂には感じられた証左でもある。

この後、15年たって赤坂は『本の窓』に「宮崎駿/ナウシカ的世界へ」を連載する。
赤坂は、15年前のナウシカへの接近と、その後の離反を語り
そしてマンガ版の連載終了時にはからずも再び出会い、
物語が自分の予想とはまったく違う展開を見せていたことに対して
大きな衝撃を受けたことを告白することから筆を起こしている。
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